ホールディングス化とは|株価抑制・37%控除・事業承継の三重メリットと注意点
公認会計士・税理士の筧です。
ホールディングス化は「大企業がやること」ではありません。むしろ、業績の良い中小企業のオーナー社長ほど、株価が上がり続けて後継者の税負担が重くなる前に検討すべき打ち手です。結論を先に言うと、持株会社を作って高収益子会社を間接保有することで、自社株評価そのものを抑え、事業承継の設計自由度を大きく上げられます。
ホールディングス化の三重メリット 早見表
| メリット | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| ①株価の間接保有効果 | 高収益子会社を持株会社の下に置き、オーナーは持株会社の株式のみを保有 | 子会社の業績が伸びても自社株評価への影響を抑えやすい |
| ②37%控除 | 純資産価額方式で、相続税評価額と帳簿価格の差額(含み益)に法人税等相当額として一定要件のもと約37%を控除(最新の税制で要確認) | 株価上昇分を約2/3程度に抑制する効果が期待できる |
| ③グループ通算制度 | 2022年4月〜の制度で、黒字子会社と赤字子会社の損益を通算 | グループ全体の法人税負担を軽減できる可能性がある |
※②の控除率・要件、③の通算の適用要件・手続きは、最新の税制で必ず確認してください。
よくある質問
Q1. ホールディングス化は中小企業でも意味がありますか?
むしろ意味があります。大企業は既にグループ経営の中で分散されていますが、中小企業は社長個人が高収益子会社の株式を直接持っているケースが多く、業績が伸びるほど自社株評価が上がり、事業承継時の税負担が重くなります。ホールディングス化はこの「直接保有によるダイレクトな評価上昇」を緩和する仕組みです。
Q2. 37%控除とは何ですか?
持株会社が子会社株式を純資産価額方式で評価する際、相続税評価額と帳簿価格の差額(含み益)に対して法人税等相当額として一定要件のもと約37%を控除できる制度です。これにより、子会社の業績が伸びて相続税評価額が上がっても、株価上昇分の一部が控除され、実際の評価額の伸びを約2/3程度に抑えられるとされています(適用には要件があり、控除率・要件ともに最新の税制での確認が必要です)。
Q3. 株価が上がってからホールディングス化しても手遅れですか?
一般的には、対策の選択肢や効果が限定的になりやすいといえます。ホールディングス化は「株価が低い段階で設計する」ことが前提の対策です。すでに株価が高騰した後に組織再編をすると、再編そのものにかかる税務コストが増加し、期待した効果が出にくくなる傾向があります。業績が伸び始めた時点、あるいは今の時点で検討を始めることをお勧めします。
なぜホールディングス化で株価対策になるのか
毎月の事業承継面談で、業績好調な社長ほど「うちの株価、去年より上がってますよね」という話が出ます。類似業種比準方式や純資産価額方式で自社株を評価すると、利益が伸びるほど株価は上がります。これは会社が成長している証拠であり、経営としては喜ばしいことです。しかし事業承継の視点では、株価が上がるほど後継者が引き継ぐ際の税負担(相続税・贈与税)が重くなるという、いわば「もう一つの負債」が積み上がっていきます。
ここでホールディングス化の発想が出てきます。高収益子会社を持株会社の下に置き、オーナーは持株会社の株式だけを持つ形にすると、子会社の業績が伸びても、その伸びが自社株評価にそのまま跳ねる構造を緩和できます。特に純資産価額方式で評価する場合、持株会社が保有する子会社株式の含み益に対して法人税等相当額として一定要件のもとで約37%が控除されるため、株価上昇分の実質的な評価額の伸びを約2/3程度に抑えられるとされています(控除率・適用要件は最新の税制で要確認です)。
さらに2022年4月から始まったグループ通算制度により、黒字子会社と赤字子会社の損益を通算できるようになりました。事業を複数展開しているオーナーであれば、グループ全体での法人税負担を軽減できる可能性があります(適用要件は最新の税制で要確認です)。
実務での組み方と注意点
典型的な手順は次のとおりです。
- 既存の事業会社を会社分割で子会社化する
- 新設した持株会社が、その子会社の株式を保有する構造にする
- 持株会社の株式評価方法(純資産価額方式・類似業種比準方式・折衷方式)を検討し、最も有利な形を選ぶ
この評価方法の選択は非常に重要です。同じ会社であっても、評価方式の選び方次第で株価の算定結果が大きく変わります。ここは専門家の判断が必須の領域で、社長自身の感覚や顧問税理士の一般的な処理だけでは最適化できないことが多いです。
また、事業承継税制(特例措置)と組み合わせて設計するケースも増えています。ホールディングス化で株価上昇を抑えたうえで、事業承継税制を使って納税を猶予・免除する、という二段構えです。ただし事業承継税制には適用期限や継続要件があるため、単独で判断せず、ホールディングス化との組み合わせ方も含めて最新の制度を確認する必要があります。この点は個別の状況によって判断が異なるため、顧問税理士・当法人にご相談ください。
一方で、組織再編には法務・税務・登記のコストが発生します。会社分割や新設分社化には専門家への依頼料、登記費用、場合によっては金融機関への説明対応も必要です。目的が曖昧なまま「とりあえずホールディングス化しておこう」と進めると、コストだけがかかって効果が出ない、あるいは銀行融資の条件変更が必要になるといった逆効果も起こり得ます。何を守りたいのか(株価抑制か、事業承継か、グループ経営の効率化か)を最初に明確にすることが前提です。
よくある誤解を整理する
「ホールディングス化は上場企業や大手グループがやること」というイメージを持つ社長は少なくありません。しかし実際には、業績好調で株価が伸び続けている中小企業のオーナーこそ、ホールディングス化による株価対策と事業承継設計の恩恵を受けやすい立場にあります。
もう一つの誤解は「株価が上がってから対策すればいい」という考え方です。ホールディングス化を含む株価対策の多くは、株価が低い段階で仕込むほど効果が大きく、組織再編コストも相対的に軽くなる傾向があります。株価が上がりきった後に着手すると、再編そのものの税務コストが増え、期待した効果が出にくくなります。
資金繰り・銀行対応への影響
ホールディングス化を検討する際、税務メリットだけに目が行きがちですが、銀行融資への影響も無視できません。会社分割によって既存の事業会社の信用力・決算内容が変わる場合、既存の融資契約の条件(コベナンツ)に影響が出ることがあります。組織再編を実行する前に、メイン銀行に事前相談し、融資条件への影響を確認しておくことをお勧めします。何も説明せずに組織再編を進めると、銀行側の警戒感を招き、その後の資金調達に支障が出るケースもあります。
経営判断:先送りのリスクに注意
事業承継の相談で多い後悔の一つが「もっと早く相談していればよかった」という言葉です。業績が伸びている会社ほど、時間が経つほど株価は上がり続けます。ホールディングス化は株価が低い段階で設計しないと機能しにくい長期戦略であり、先送りすればするほど後継者の税負担が膨らんでいく可能性があります。今の業績が良いこと自体が、実は「今のうちに検討すべき理由」になっているという逆説を、多くの社長は見落としています。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
まずは自社の現在の株価(相続税評価額)を専門家に算定してもらい、「今のうちにホールディングス化を検討すべきかどうか」の判断材料を持つことです。株価が分からなければ、対策のタイミングも判断できません。具体的な設計や適用要件の確認については、顧問税理士・当法人にご相談ください。
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