毎年上がり続ける社会保険料の会社負担に頭を悩ませる経営者は少なくありません。2026年からは子ども・子育て支援金の上乗せも始まり、負担はさらに増えます。社会保険料は「報酬に対する率」で決まるため、役員報酬の設計と一体で考えれば、実態を伴う適正な範囲で負担を抑えられます。合法的にできることと、やってはいけないことを税理士が整理します。
大原則:社会保険料は「役員報酬設計」と一体で考える
社会保険料は標準報酬月額(=報酬水準)に連動します。したがって、小手先の技よりも役員報酬そのものの水準と払い方を、法人税・所得税・社保・将来の年金額まで含めて全体最適で設計することが本質です。個々の手法は、その全体設計の中で初めて意味を持ちます。
合法的にできる主な方法
- 定時決定(4〜6月)の報酬を意識する:標準報酬月額は原則4〜6月の報酬平均で決まり、その年の9月から翌年8月の社保に反映されます。昇給時期や一時的な報酬の集中を踏まえて設計します
- 出張日当(旅費規程)の活用:適正な旅費規程に基づく日当は実費弁償的な性質で、標準報酬に含まれず社会保険料の対象外です(実際の出張の事実が必要)
- 退職金の活用:報酬の一部を将来の退職金(退職所得控除で有利)として設計することで、毎月の標準報酬月額を適正化できます
- 非常勤役員の活用:勤務実態が非常勤である家族役員などは、実態に応じて社会保険の加入対象外となる場合があります(実態が伴うことが前提)
- 健康保険組合の選択:協会けんぽより料率の低い健康保険組合に加入できる場合、保険料率の差で負担が下がることがあります
賞与と月給のバランス(上限キャップ)の考え方
社会保険料には上限があり、賞与は健康保険で年間累計573万円、厚生年金で1回あたり150万円を超える部分には保険料がかかりません。この仕組みを踏まえた報酬・賞与の配分設計は理論上は可能です。ただし、月給を極端に下げて賞与に寄せるような形だけの操作は、実態を伴わなければ年金事務所に否認されるリスクがあり、当法人では推奨しません。あくまで実態に即した合理的な範囲で設計します。
やってはいけないこと・注意点
- 実態のない操作はしない:勤務実態のない非常勤役員化、形だけの報酬付け替えは否認・追徴のリスク
- 報酬を下げすぎない:傷病手当金や将来の厚生年金の受給額は標準報酬月額に連動するため、社保削減だけを追うと万一の保障や年金が薄くなります
- 専門家と一体設計する:社会保険は社会保険労務士、税務は税理士の領域。両者と連携して法人税・所得税・社保・保障をまとめて最適化することが重要です
まとめ
社会保険料は「削減できない固定費」ではなく、役員報酬設計と一体で適正な範囲で抑えられるものです。ただし、実態を欠く形だけの操作は否認リスクがあり、報酬を下げすぎると保障や年金が薄くなる副作用もあります。税務・社会保険・保障をまとめて見られる専門家と、全体最適で設計してください。
中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応・事業承継を専門とし、年間100社以上のオーナーと毎月面談。数字の裏にある経営判断を支援。
よくある質問
Q. 社会保険料は本当に削減できるのですか?
社会保険料は標準報酬月額(報酬水準)に連動するため、役員報酬の設計と一体で、実態を伴う適正な範囲であれば負担を抑えられます。ただし「削減」を単独目的にした形だけの操作は否認リスクがあり、法人税・所得税・将来の年金額まで含めた全体設計の中で考えるべきです。
Q. 4〜6月の報酬で社会保険料が決まるというのは本当ですか?
標準報酬月額は原則として4〜6月の報酬の平均で決まり(定時決定)、その年の9月から翌年8月までの社会保険料に反映されます。昇給時期や一時的な報酬の集中を踏まえて設計することが実務では重要です。
Q. 出張日当は社会保険料の対象になりますか?
適正な旅費規程に基づいて支給される出張日当は、実費弁償的な性質を持ち、標準報酬に含まれないため社会保険料の対象外です。ただし実際に出張した事実が必要で、実態のない支給は給与として課税・社保対象になります。
Q. 月給を下げて賞与に寄せれば社会保険料は減らせますか?
賞与は健康保険で年間累計573万円、厚生年金で1回150万円を超える部分に保険料がかからない仕組みがあり、理論上は配分の設計が可能です。ただし月給を極端に下げて賞与に寄せる形だけの操作は実態を伴わなければ否認リスクがあり、当法人では推奨していません。
Q. 社会保険料を下げる際の注意点は何ですか?
傷病手当金や将来の厚生年金の受給額は標準報酬月額に連動するため、社保削減だけを追うと万一の保障や年金が薄くなります。また実態のない操作は否認・追徴のリスクがあります。社会保険労務士・税理士と連携し、税務・社保・保障を一体で設計することが大切です。




