持株会社の作り方|株式移転・会社分割の違いと設立の手順
公認会計士・税理士の筧です。
持株会社を作る方法は大きく4つ、株式移転・株式交換・会社分割・株式譲渡(現物出資)です。新設の持株会社の下にゼロから会社を作るなら株式移転、既存の会社を親会社に仕立てるなら株式交換、特定の事業だけを切り出すなら会社分割、というように「今どういう状態の会社をどう組み替えたいか」で選ぶ手法が変わります。どれを選ぶかを間違えると、想定していなかった株式の譲渡益に課税されたり、後で組織を組み直すコストが発生したりするので、手法選びと適格要件の確認は必ず税理士・司法書士とセットで進めてください。
なお、持株会社化のメリット(株価抑制・自社株評価の圧縮・事業承継対策)についてはホールディングス化とは|株価抑制と37%控除で事業承継対策で詳しく解説していますので、本記事では「どうやって作るか」に絞って解説します。
よくある質問
Q1. 持株会社を作るのに一番手っ取り早い方法はどれですか?
既に複数の会社(本体会社と後継者が別に持つ会社など)がある場合は、株式交換で片方をもう片方の子会社にするのが最短です。会社を新設せずに済むため、期間も費用も比較的抑えられます。一方、今ある1社を「持株会社」と「事業会社」に分けたいなら、株式移転か会社分割が必要になります。
Q2. 会社分割と株式移転はどう違うのですか?
株式移転は「既存の会社の株式をすべて新設する持株会社に移し、既存会社を丸ごと子会社にする」方法です。会社分割は「事業の一部(または全部)を切り出して別会社にする」方法で、事業を複数の子会社に分けたいときや、特定の事業だけをグループ内で移動させたいときに使います。持株会社を頂点に置く形自体は、会社分割の後に株式移転や現物出資を組み合わせて作るケースが多いです。
Q3. 持株会社化には税金がかかりますか?
組織再編税制上の「適格要件」を満たせば、株式の移転・交換・分割の時点では譲渡益への課税は繰り延べられます。逆に要件を満たさない「非適格」の組織再編になると、含み益に対して法人税が課税される可能性があります。適格要件の判定は個別の事実関係次第で変わる専門的な領域なので、ここは実務で最も事故が起きやすいポイントです。後ほど詳しく説明します。
手法ごとの違いと、どのケースでどれを選ぶか
持株会社を作る手法は、税務上の名称としては次の4つに整理できます。
株式移転(新設型)
既存の1社の株主が、新しく作る持株会社に自社の株式を移し、既存会社は持株会社の100%子会社になる方法です。オーナー1人で会社を経営していて「この会社の上に持株会社を作りたい」というシンプルなケースでよく使われます。持株会社は新設なので、登記や許認可の引き継ぎなど新設会社特有の手続きが発生します。
株式交換
既存の会社Aが、既存の会社Bの株式を取得してBを100%子会社にする方法です。オーナーが複数の会社を持っていて、そのうちの1社を持株会社に仕立てたい場合に向いています。新設会社を作らずに済むため、株式移転より手続きがシンプルになりやすいのが特徴です。
会社分割
会社の中の特定の事業だけを切り出して、別の会社(新設または既存)に承継させる方法です。持株会社化そのものというより、「事業ごとに会社を分けてから持株会社の下にぶら下げる」前段階として使われることが多い手法です。不動産賃貸業だけを別会社にする、店舗事業を切り出すといった実務でよく登場します。
株式譲渡・現物出資
オーナーが個人で持っている既存会社の株式を、新設する持株会社に「現物出資」する方法です。組織再編税制ではなく、個人から法人への出資という構成になるため、税務上の扱いが他の3つと異なります。現物出資する株式の評価額次第で、オーナー個人に譲渡所得課税が生じるかどうかが変わるため、株価が低いタイミングで実行できるかが重要になります。
| 手法 | 使う場面 | 新設会社 |
|—|—|—|
| 株式移転 | 1社の上に持株会社を作りたい | 必要 |
| 株式交換 | 既存の別会社を親会社にしたい | 不要な場合が多い |
| 会社分割 | 事業単位で切り出したい | 場合による |
| 現物出資 | オーナー個人の株式を移したい | 必要 |
どの手法も組み合わせて使うのが実務では一般的です。例えば「会社分割で事業を子会社に切り出し、その後株式移転で持株会社を新設する」といった二段階の設計をすることも珍しくありません。
設立の流れと期間・費用の目安
株式移転を例にすると、大まかな流れは次の通りです。
1. 株式移転計画の作成(持株会社の定款内容、株式の割当比率などを決める)
2. 株主総会での特別決議(原則として議決権の3分の2以上の賛成が必要。会社法上の一般的な要件であり、個別の定款規定等は要確認)
3. 債権者保護手続き、反対株主の株式買取請求への対応
4. 持株会社の設立登記
5. 税務署・都道府県・市町村への異動届、社会保険関係の手続き
期間の目安としては、株主総会の招集通知から登記完了まで数か月程度を見込んでおく必要があります。株主が少数の同族会社であれば手続き自体は簡略化できますが、それでも計画書の作成や登記関係の書類準備には一定の時間がかかります。
費用面では、司法書士への登記報酬、税理士への税務スキーム設計・適格要件の確認報酬、登録免許税などが発生します。案件の規模や複雑さによって幅が大きいため、着手前に専門家から個別に見積もりを取ることをおすすめします。「思ったより時間もお金もかかった」という声を面談でよく聞きますが、これは事前の見積もりを取らずに動き始めてしまうケースに多い印象です。
税務上の急所:適格要件と自社株評価のタイミング
持株会社を作る実務で、一番の急所は「適格組織再編に該当するかどうか」です。
株式移転・株式交換・会社分割は、税制上の要件(金銭等不交付要件、支配関係の継続要件など)を満たせば「適格」となり、その時点での資産の譲渡益への課税が繰り延べられます。逆に要件を満たさない「非適格」になると、含み益に対して法人税が課税されてしまい、想定外の税負担が発生する可能性があります。これらの要件の当てはめは個別の事実関係によって判断が分かれるため、必ず事前に税理士へ確認してください。
もう一つの急所が「自社株評価のタイミング」です。参考資料にもある通り、持株会社化による株価抑制効果(純資産価額方式における法人税等相当額の控除など、具体的な控除率・要件は最新税制で要確認)は、株価が低い段階で設計してこそ効果を発揮しやすいとされています。業績が好調で株価が上がりきってから持株会社化を検討すると、控除の効果が薄まり、本来期待できたはずの節税効果が薄れてしまう可能性があります。
「株価が上がってから対策すればいい」と考えているオーナーは少なくありませんが、一般的にはこの考え方はリスクがあります。株価が低いうちに設計を終えておかないと、持株会社化による株価抑制効果が十分に発揮されない可能性があります。適格要件の判定と自社株評価は、どちらも専門的な判断が必要な領域なので、必ず税理士に事前相談してください。
持株会社化した後の実務:資金管理・配当・役員体制
持株会社を作った後は、次の3点が実務上のテーマになります。
グループ間の資金管理
子会社から持株会社への資金移動は、貸付・配当・グループ内取引のいずれの形を取るかで税務上の扱いが変わります。特に貸付金が固定化してくると、銀行融資の審査時に「実質的な使途不明金」と見なされるリスクがあるため、資金の流れは毎期整理しておく必要があります。
配当の益金不算入
子会社から持株会社への配当は、持株比率に応じて一定割合が益金不算入となる制度があります(持株比率区分・不算入割合は最新税制で要確認)。持株会社を作る目的の一つに、グループ内の資金をこの制度を使って効率的に移動させる狙いがあります。ただし持株比率や保有期間によって不算入割合が変わるため、配当設計は税理士と一緒に組み立てるべき領域です。
役員体制
持株会社の役員と事業会社の役員をどう配置するかは、後継者育成の観点でも重要です。持株会社に後継者を役員として置き、事業会社の経営は現経営陣に任せるといった体制を取ることで、経営権の分離と後継者教育を同時に進めている会社もあります。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
持株会社を作る手法は複数ありますが、どれを選ぶべきかは「今の会社の数」「切り出したい事業の有無」「株価の水準」によって変わります。まず今日やるべきことは、自社の現在の株価(自社株評価額)がどの水準にあるかを税理士に確認してもらうことです。株価が低いうちに手を打てるかどうかで、持株会社化の効果は変わってきますので、個別の状況に応じて顧問税理士・当法人にご相談ください。
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税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応から経営判断までを一体で支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で情報発信を行う。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。数字の裏にある経営判断を重視し、中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応を支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で、経営者に向けて税務とお金の知識を発信しています。







