経営セーフティ共済は節税にならない?正しい使い方と2024年改正の落とし穴
公認会計士・税理士の筧です。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は「節税になる」と勧められて加入するケースが多いのですが、これは節税ではなく「課税の繰り延べ」です。積み立て時に減った税金は、解約時に返戻金への課税で戻ってくる仕組みになっています。2024年10月の改正で従来の再加入スキームも封じられたため、出口を設計せずに入るとむしろ損をしかねない制度になっています。
経営セーフティ共済 基本早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金 | 月5,000円〜20万円程度(自由に設定・変更可) |
| 年間の損金算入上限 | 最大240万円程度(全額損金) |
| 累計積立上限 | 800万円程度 |
| 返戻率(12ヶ月未満で解約) | 0%(元本割れ) |
| 返戻率(40ヶ月以上で解約) | 最大95%程度 |
| 解約時の返戻金の税務上の扱い | 全額を雑収入として計上(全額課税) |
※数値は制度上の一般的な目安です。最新の内容は中小機構の公表情報で必ずご確認ください。
よくある質問
Q. 経営セーフティ共済とはどんな制度ですか。節税効果はありますか。
中小企業倒産防止共済の通称で、取引先が倒産した際に無担保・無保証人で借入ができる共済制度です。掛金は月5,000円〜20万円程度の範囲で設定でき、年間最大240万円程度まで全額損金算入、累計800万円程度まで積み立てられるとされています(最新の内容は中小機構の公表情報でご確認ください)。ただし解約時の返戻金は全額が雑収入として課税されるため、積み立て時の節税と解約時の課税をセットで設計しない限り「節税」ではなく「課税の先送り」になります。
Q. 2024年の改正で何が変わりましたか。
2024年10月の改正により、任意解約をすると解約後一定期間(目安として2年程度とされていますが、最新の制度要綱で要確認です)は再加入しても掛金を損金算入できなくなりました。従来は「積み立てて解約し、すぐ再加入する」を繰り返すことで毎年の損金を作り続ける使い方が可能でしたが、この改正で実質的に封じられています。改正を知らないまま従来の感覚で解約すると、損金にならない掛金を払い続けるだけの状態になりかねません。
Q. 解約するとき、税務上どんな問題が起きますか。
返戻金は全額がその期の雑収入として利益に加算されます。累計800万円程度まで積み立てて40ヶ月以上経過後に解約すると返戻金は最大95%程度(目安)になり、他に大きな損金がなければその期に一気に課税される可能性があります。解約のタイミングは、利益が少ない期や大きな損金が出る期(退職金・大型設備投資・赤字転落)に合わせることが基本的な考え方とされていますが、実際の判断は顧問税理士・当法人にご相談ください。
なぜ「節税」ではなく「課税の繰り延べ」なのか
毎月の面談で「利益が出たのでセーフティ共済に入りましょう」という話は必ず出てきます。ここで止まって考えていただきたいのは、この制度が減らしているのは「今期の税金」ではなく「税金を払うタイミング」だという点です。
掛金を払った期は全額損金になるので法人税は減ります。しかし解約すれば返戻金は全額が雑収入となり、その期の利益に載って課税されます。トータルで見れば、払わなかった税金は解約時にそのまま戻ってくる構造です。これは制度の欠陥ではなく、そもそも「共済」としての設計がそうなっているだけの話です。取引先の倒産に備えて積み立てる制度であり、節税商品として作られたものではありません。
税務上、この理解がないまま「毎年240万円入れて税金を減らしましょう」という説明だけで加入すると、5〜10年後の解約時に想定していなかった税負担が発生し、資金繰りで慌てることになりかねません。
2024年10月改正の落とし穴:積立→解約→再加入スキームの封鎖
以前は、40ヶ月以上積み立てて返戻率95%程度で解約し、その資金でまた新規に加入し直す、という「積立→解約→再加入」を繰り返すことで、実質的に毎年の損金を作り出す使い方が広まっていました。
2024年10月の改正により、任意解約をすると解約後一定期間(目安として2年程度とされています。最新の制度要綱で要確認)は再加入しても掛金を損金算入できなくなりました。つまり、解約直後に再加入しても、その掛金は税務上ただの現金の積立にしかならない可能性があります。
この改正を知らずに「解約して入り直せば節税を続けられる」という古い情報のまま行動すると、損金にならない掛金を払い続けるだけの状態に陥りかねません。加入を検討する段階、あるいは既に加入している段階で、この改正の存在を必ず押さえておく必要があります。
使い方を間違えると損する3パターン
現場で実際に見かける失敗は、だいたい次の3つのどれかです。
パターン1:利益が出た期に解約してしまう
「まとまった資金が必要になったから」という理由で、たまたま利益が出ている期に解約すると、返戻金の課税と元々の利益が重なり、想定以上の税負担になる可能性があります。
パターン2:40ヶ月未満で解約し元本割れする
返戻率は12ヶ月未満だとゼロになり、40ヶ月以上でようやく最大95%程度に達するとされています(最新の返戻率は中小機構の公表情報で要確認)。短期の資金繰りのために早期解約すると、積み立てた掛金より戻ってくる金額が少なくなる可能性があります。
パターン3:解約時の課税を何も相殺できていない
大きな損金の出る予定もないまま何となく解約すると、返戻金の課税を打ち消す手段がなく、そのまま丸ごと税負担として跳ねてくる可能性があります。
いずれも「入口だけ見て出口を見ていない」ことが原因です。
入口と出口をセットで設計する
正しい使い方は、加入する時点で「いつ、何と合わせて解約するか」まで決めておくことです。代表的な出口として、以下のような考え方があります。
- 退職金の支払い期に解約を合わせる:役員退職金は損金額が大きくなりやすいため、返戻金の課税を相殺しやすい
- 大型設備投資の特別償却・即時償却の年度に解約する:設備投資による大きな損金と返戻金の雑収入を同じ期にぶつける
- 赤字転落が見込まれる期に解約する:もともと課税所得が少ない、またはマイナスになる期であれば、返戻金が課税されても実際の税負担は限定的になりやすい
累計800万円程度まで積み立てて解約すると、返戻金は最大95%程度(目安)になります。これに対して相殺できる損金が何もない場合、実効税率次第では190〜228万円程度の税負担が一度に発生する可能性があります(実効税率25〜30%を仮定した参考例であり、実際の負担額は所得状況・実効税率により異なります)。この規模の課税を、資金繰りの都合だけで無計画に迎えるかどうかが、経営セーフティ共済を「使いこなせているか」の分かれ目です。実際の解約タイミングや税負担の見積もりは、顧問税理士・当法人にご相談のうえで判断することをおすすめします。
銀行対応の視点でも、解約による一時的な雑収入の増加は決算書上の利益を跳ね上げるため、翌期以降の業績評価とのギャップに注意が必要です。逆に、退職金など損金と合わせて解約すれば、決算書への影響を抑えたまま資金を手元に戻せる可能性があります。
向いていない会社の特徴
以下に当てはまる会社は、加入前にもう一度目的を確認したほうがよい会社です。
- 資金繰りが厳しい会社:掛金分の現金が毎月確実に出ていくため、キャッシュフローを圧迫します
- 利益が安定しない会社:積立と解約のタイミング設計が難しく、意図しない期に解約せざるを得なくなるリスクがあります
- 短期の節税効果だけを期待する会社:40ヶ月未満での解約は返戻率が下がり、12ヶ月未満はほぼ元本割れとなる設計です(最新の返戻率は要確認)
- 資金調達の予定がない会社:本来は取引先倒産時の無担保融資が制度の目的であり、その必要性がない会社にとっては現金を寝かせるだけの制度になりがちです
まとめ:まず一つだけやるとしたら
既に加入している方は、まず「累計いくら積み立てているか」「解約したら返戻金と税負担がどの程度になりそうか」を今の時点で一度概算してみてください。そのうえで、退職金や設備投資など、解約とぶつけられる出口が数年以内にあるかを確認する。それだけで、この制度を「節税商品」として誤解したまま突然の税負担に驚く事態を避けやすくなります。具体的な解約タイミングの判断は、顧問税理士・当法人にご相談ください。
💬 個別のご相談は初回無料相談で承っています → https://tax-co.grancers.co.jp/contact/
👉 節税と銀行格付けは逆方向に働く点はこちら:銀行格付けが下がる決算書の共通点と節税の落とし穴







