「こんなに税金を払うなら、決算賞与で従業員に還元したかった…」と思ったことがある方がきっといらっしゃるはずです。実際にこういう声を聞くこともよくあります。今回は、この従業員への決算賞与について考えてみたいと思います。
決算賞与は、決算月に支給すればもちろん費用とすることができます。つまり、節税につながります。また、決算月の翌月に支給した場合にも、下記3つの要件を満たせば費用とすることができます。
- 決算日までに決算賞与の支給額について、支給を受けるすべての従業員に通知していること
- 決算日後1ヶ月以内に各従業員に通知した金額を支払っていること
- 決算日に未払計上していること
「 (借方)賞 与 ×× /(貸方)未払賞与 ×× 」
↑ ↑
(費用科目) (負債科目)
節税と決算処理の具体例を考えてみましょう。
<節税>
3月決算の会社で利益1,000万円、税額約300万円の会社を想定します。例えば300万円の決算賞与を支給した場合、利益700万円、税額約200万円と約100万円の税額減少、つまり節税として期待できます。
<決算処理>
①3月31日までに、決算賞与を支払う予定のすべての従業員に対して、その支給額を個別に通知します。②翌月の4月30日までに通知した金額を支給します。③期末に「未払賞与」を計上します。
実務上の留意点として、決算賞与は税務調査で証明を求められるものですので、①について、各人への通知は書面で行い、通知された旨のサイン等をもらっておくことが必要です。また、②の証明としては、銀行振込であれば問題ありませんが、現金支給の場合には、各従業員から受領書をもらうなどの対応が必要になります。③は決算書で適切に処理されていれば問題ありません。
留意点はあるものの、従業員にも還元でき、節税にもなるとなれば魅力的なものです。経営者としては、考えるべき選択肢の一つといえるのはないでしょうか。
以上、節税の視点から「従業員への決算賞与」を考えてみました。次回のコラムでは、節税も含めた会社経営という視点から「従業員への決算賞与」が与える影響を考えてみたいと思います。