建物附属設備・構築物の減価償却は、平成28年4月1日以後に取得したものから定率法が廃止され、定額法に一本化されました(所得税も同様)。ここでは、どの資産が定額法のみになったのか、いまも定率法が選べる資産、実務への影響、既存資産の扱いを整理します。
減価償却方法 早見表
| 資産の区分 | 改正前の償却方法 | 改正後(H28.4.1以後取得) |
|---|---|---|
| 建物附属設備及び構築物(鉱業用を除く) | 定額法又は定率法 | 定額法に一本化(定率法廃止) |
| 鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物に限る) | – | 定額法又は生産高比例法 |
| リース期間定額法・取替法等の対象資産 | 従来どおり | 存置(変更なし) |
| 現在定額法を適用中の場合 | 定額法 | 改正による影響なし |
| 現在定率法を適用中の場合 | 定率法 | 改正の影響を受ける(要注意) |
建物附属設備の償却方法と主な耐用年数・償却率【早見表】
建物附属設備の償却方法は、平成28年4月1日以後に取得したものは定額法のみです。計算式は「取得価額 × 定額法の償却率」で、償却率は耐用年数で決まります。代表的な設備の耐用年数と定額法償却率は次のとおりです(個別の区分は耐用年数省令の別表で確認してください)。
| 設備の例 | 耐用年数 | 定額法償却率 |
|---|---|---|
| 電気設備(照明設備含む・蓄電池電源設備を除く) | 15年 | 0.067 |
| 給排水・衛生設備、ガス設備 | 15年 | 0.067 |
| 冷房・暖房・通風・ボイラー設備 | 13年 | 0.077 |
| 昇降機設備(エレベーター) | 17年 | 0.059 |
| 昇降機設備(エスカレーター) | 15年 | 0.067 |
| アーケード・日よけ設備(主に金属製) | 15年 | 0.067 |
| 店舗簡易装備 | 3年 | 0.334 |
計算例:冷暖房設備を300万円で取得した場合(耐用年数13年・定額法償却率0.077)、1年あたりの減価償却費は 300万円 × 0.077 = 23万1,000円 です。定額法なので、原則として毎年この同額を償却していきます(初年度は事業供用月からの月割)。
なお、建物本体に付随していても、それ自体で機能する設備(電気・給排水・空調など)は「建物」ではなく「建物附属設備」として上記の耐用年数で償却します。建物本体(例:鉄骨鉄筋コンクリート造事務所50年)とは耐用年数が大きく異なるため、取得時の区分を誤ると毎年の償却費・税額に影響します。
よくある質問
Q. すでに定率法で償却している資産は、変更が必要ですか?
改正は平成28年4月1日以後に取得した資産に適用されます。改正日より前に取得し既に定率法で償却している既存資産は、原則として従来どおりの方法を継続できます。
Q. 機械装置や車両は今も定率法を選べますか?
選べます。今回一本化されたのは建物附属設備・構築物(鉱業用を除く)です。機械装置、車両運搬具、工具・器具備品などは引き続き定率法も選択できます。
Q. なぜ定額法に一本化されたのですか?
建物本体が既に定額法のみとされていたこととの整合や、課税の平準化の観点から、建物附属設備・構築物も定額法に統一されました。
いまも定率法が使える資産・使えない資産
定額法のみ(定率法が使えない):建物(平成10年4月1日以後取得は以前から定額法のみ)、建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)。鉱業用の建物・建物附属設備・構築物は「定額法または生産高比例法」。
いまも定率法を選べる:機械装置、車両運搬具、工具・器具備品など。これらは定額法・定率法のいずれかを選択できます(法定償却方法は定率法)。設備投資の中心がこれらの資産なら、定率法による早期償却は引き続き有効です。
実務への影響
定率法は初年度に近いほど償却費が大きくなり、取得初期の節税に有利でした。建物附属設備・構築物ではこの定率法が使えなくなったため、内装・電気設備・外構などへの投資は初年度の節税インパクトが小さくなり、費用化が長期に平準化されます。テナント内装や店舗改装など建物附属設備が大きい業種ほど、投資時期と資金計画への影響を事前に見ておくべきです。
すでに定率法で償却している資産はどうなる?
改正は取得日で判定します。平成28年3月31日以前に取得し、すでに定率法で償却中の建物附属設備・構築物は、そのまま定率法を継続できます(改正の影響を受けません)。新たに取得するものだけが定額法一本化の対象です。
まとめ
建物附属設備・構築物は平成28年4月以後の取得分から定額法のみ。機械装置・車両・器具備品は今も定率法が選べます。どの資産にいつ投資するかで初年度の節税額が変わるため、設備投資の前に償却方法と資金計画を税理士と確認することをおすすめします。
本記事は公認会計士・税理士 筧智家至が監修しています。





