第6回 「雇用促進税制」という制度がある!
前回のコラムで紹介した所得拡大促進税制、これは年間の給与総額が増加している場合に税務上の優遇を受けられる可能性があるものでした。この「所得拡大促進税制」とは別に、「雇用促進税制」という制度があります。所得拡大促進税制とも関係がある制度で、平成25年度税制改正で改訂されていますので、ご紹介します。こちらもうまく使えば、相当の節税効果が見込めます。
「雇用促進税制」は、従業員数が増加した場合に税額控除が受けられる、という内容になります。昨年よりも従業員を増やした場合、その増えた人数×40万円の税額控除が受けられるかもしれないということです。制度の改正点とポイントを下記にまとめています。
- <改正点>
- 増加雇用者数1人当たり20万円であった税額控除限度額が、平成25年4月1日以後に開始する事業年度について、増加雇用者数1人当たり40万円に引き上げられる。
- <ポイント>
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- 法人税額の10%(中小企業者は20%)が限度
- 適用要件を満たさなければならない
- 所得拡大促進税制との選択適用
雇用促進税制はもともと平成23年度に作られた制度になります。そして、この改正は平成25年度改正でなされたものです。今まで増加人数×20万円であったものが、40万円に引き上げられました。納税額が多い会社ほど、かなりの効果が期待できます。
ポイントとしては、税額控除の限度額があり、法人税額の10%まで、中小企業者では20%まで、というように定められています。また、適用要件を満たさなければなりません。誰でも必ず使えるわけではなく、適用するためには要件を満たす必要があります。
その適用要件、具体的に5つがあげられています。
- <適用要件>
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- 青色申告書を提出する事業主である
- 適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと
- 適用年度に雇用者(雇用保険一般被保険者)の数を5人以上(中小企業では2人以上)、かつ10%以上増加させていること
- 適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額以上であること
- 風俗営業等を営む事業主でないこと
まず1つ目、「青色申告書を提出する事業主である」という要件、これは説明の必要がないと思います。2つ目、「適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと」となっています。これは、会社側から退職させるようなことがあれば雇用促進という意図に反してしまうことから、この要件がついていると言えます。3つ目、「適用年度に雇用者、具体的には雇用保険一般被保険者の数を5人以上、中小企業であれば2人以上、かつ10%以上増加させていること」となっています。中小企業というのは、資本金1億円以下の会社、または個人事業主の方が該当すると考えてください。増加については、前事業年度末との比較になります。そして4つ目、「適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額以上であること」という要件です。詳細な計算方法は割愛しますが、趣旨としては、ただ雇用者数を増やして、給与はほとんど増加していないような状況では適用できないということになります。給与水準を下げずに通常の給与を支払っていれば満たされるものと思います。最後の5つ目として、「風俗営業等を営む事業主でないこと」という制限があります。厚生労働省が挙げている例では、パチンコ店、マージャン店、それからナイトクラブといったものがあります。そういった事業は対象外となります。
以上の5つが適用要件となりますが、さらに前提として、あらかじめ「雇用促進計画」をハローワークに提出していなければ、適用要件を満たしていても優遇は受けられません。流れとしては、下記の通りになります。
- 適用年度開始後2か月以内にハローワークに提出
- 雇用促進計画の達成状況を適用年度終了後2ヶ月以内にハローワークに確認
- 確認を受けた雇用促進計画の写しを確定申告書に添付
以上が適用要件となりますが、こう見ると、適用要件は結構多いですね。いろいろと準備が必要になります。
ちなみに、雇用促進税制と所得拡大促進税制が関係すると言ったのは、ポイント3つ目に記載している通り、2つの制度は選択適用とすることが定められているからです。当然、雇用者が増えれば給与も増えるため、どちらにも当てはまるケースも十分に考えられます。その場合には、どちらか一方のみ適用することになります。
この話を考えると、どちらがいいの?という疑問が出ます。
各会社で異なりますので、答えがあるものではありません。ただ、お勧めできることが一つあります。雇用促進税制は、「雇用促進計画」を提出しなければならず、しかも2ヶ月以内という期限付きです。このため、従業員が少しでも増える予定がある会社では、まずは雇用促進計画を提出しておきたいところです。提出した結果、結局は所得拡大促進税制を適用しても問題ありません。このことから、まずは雇用促進計画を作成することがポイントだと私は思っています。あとは、顧問の会計士さん、税理士さんと相談しながら、計画的に対策、計算して頂ければと思います。
以上が、「雇用促進税制」でした。せっかく定められている制度ですので、ぜひ有効に活用したいものです。
担当:久留島 光博