第5回 所得拡大促進税制を使ってみよう!
前回、所得拡大促進税制についてご紹介いたしました。第5回では、平成26年度税制改正で使いやすくなった「所得拡大促進税制」の改正内容をご紹介します。平成25年度税制改正で制定されたこの税制は、平成26年度税制改正でさらに改正されています。
所得拡大促進税制を適用する場合、3つの条件を満たす必要がありました。
- その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であること
⇒給与が基準事業年度(適用初年度の直近前の事業年度)より増加して
いること! - 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと
⇒前事業年度の給与支給額を上回っていること! - 平均給与等支給額が前事業年度の平均支給額等を下回らないこと
⇒前事業年度の平均給与を上回っていること!
上記の3つの要件は、平成25年度税制改正時に定められた内容です。平成26年度改正では、さらに条件が緩和され、適用しやすくなったと言えます。見直し内容は、下記の2点になります。
【見直し内容①】
総額「5%」増加要件を一時的に緩和するとともに、適用期限を2年間延長している。
H25年度 | H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度 | |
---|---|---|---|---|---|
現行 | 5% | 5% | 5% | – | – |
改正後 | 2% | 2% | 3% | 5% | 5% |
【見直し内容②】
平均給与の計算において、「国内雇用者に対する給与等」から「継続雇用者に対する給与等」に見直している。
⇒退職者・再雇用者・新卒採用者を除いて平均給与を比較することになります。
まず【見直し内容①】について、条件①が改正されています。平成25年度税制改正で「5%」、となっていた箇所が、改正後は「2%」になっています。そして、適用年度が延長されるとともに、徐々に5%の水準まで近づけています。前事業年度からの増加割合が2%となれば、該当する会社は本当に多くなると思います!
そして【見直し内容②】、これは上の枠内③の平均給与についての改正で、継続雇用者で判断してください、という改正になります。例えば、昨年は勤続年数の長い従業員が数名いたのに対して、今年はその方々が退職し、新人が多くなった場合、平均給与は普通では下がってしまいますね。こういった特殊事情は考慮しますよ、というのが見直し内容です。
前年に創設された所得拡大促進税制がなぜさらに改正されたのか、それは経済活性化のためには、賃金・雇用の拡大が不可欠であると言われていることに理由があります。サービス業など、より多くの雇用が期待できる業種で賃金水準の改善が実現していなかったり、正社員数の増加が見られなかったりという状況を考慮し、より雇用や賃金増加を促進させるために改正がなされたと言えます。
このような趣旨もあり、所得拡大に貢献した場合には、優遇措置が受けられることになります。あなたが日本の経済に貢献して、合わせてあなたが恩恵を受けられる、これが「所得拡大促進税制」の最大のメリットと言えるかもしれません。
担当:久留島 光博