第4回 所得拡大促進税制ってどんな制度?
今回は、平成26年度税制改正で使いやすくなった「所得拡大促進税制」で受けられる税額控除をご紹介します。この「所得拡大促進税制」、簡単に説明すると、「給与等の支給額を増加させた場合、増加額の10%を税額控除できる」、という制度です。
例えば、新入社員を採用した場合や中途採用をした場合、当然に昨年よりも今年の給与総額は増えますよね。また、今年は業績が良かったから少し賞与を増やしました、というような会社でも、昨年に比べて給与総額は増加します。そのような会社で、この「所得拡大促進税制」が使えるかもしれないということになります。
これだけを聞くと、うちの会社にも使えそう! となりますよね。
それでは概要を確認していきましょう。
青色申告書を提出する法人が、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度で国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、下記①~③の要件を満たす場合、雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができることとなります。ただし、控除税額は、当期の法人税額の10%(中小企業等は20%)を限度とします。
- その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であること
⇒給与が基準事業年度(適用初年度の直近前の事業年度)より増加して
いること! - 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと
⇒前事業年度の給与支給額を上回っていること! - 平均給与等支給額が前事業年度の平均支給額等を下回らないこと
⇒前事業年度の平均給与を上回っていること!
気になるのはやはり条件、ということで詳細を一つずつ確認していきましょう。
まず、①「その法人の雇用者給与等支給増加額、具体的には、雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額、この基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上である」となっています。基準雇用者給与等支給額とは、適用初年度(適用年度1)の直近前の事業年度における給与支給額になります。そのときの給与支給額よりも本年度の給与支給額が5%以上増加していることが条件となります。下の図の<ケース1>のⅠ(赤枠)の部分のように増加していることが条件となります。
そして、②「雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと」となっています。つまり、前事業年度の給与支給額を上回っていることが条件となります。
ここで、条件①と何が違うのか?と思った方がいるかもしれません。私は読んでいて条件①と一緒では、と思ってしまいました。何を指しているかと言うと、翌年度(適用年度2)以降のことを定めています。具体的には、<ケース1>のⅡ(赤枠)ように増加していれば問題ありません。
では、その翌年度が<ケース2>がこんな場合だとどうでしょうか。確かに、基準事業年度と比べると増加していますので、条件①は満たしていますよね。しかし、前事業年度を上回ること、これは満たしていません。このような場合には、条件②の要件は満たさないため、適用できないこととなります。
そして、③「平均給与等支給額が前事業年度の平均支給額等を下回らないこと」、これが3つ目の条件となります。給与のベースが下がっては、給与アップを狙って税制改正をした意味がないということになります。このため、「ベースは下がった。しかし人員が増えているため、結果的に総額は増えた。」というような場合には適用できません。
以上、3つの条件を満たすと所得拡大促進税制が使えるということになります。
いろいろとご説明してきましたが、本当に簡単に言うと、①~③の条件を満たした場合、給与増加額の10%、もしくは法人税額の10%のうち、小さい方の分だけ税金を減らせます、ということになります。
この所得拡大促進税制は、平成25年度税制改正で創設された制度ですが、平成26年度税制改正でさらに条件が緩和されています。
次回のコラムでは、その平成26年度税制改正の改正点についてご紹介します。
担当:久留島 光博