相続の相談先はどこがいい?税理士・弁護士・司法書士・銀行の違いと選び方
公認会計士・税理士の筧です。
相続の相談先は「揉めているか」「不動産が多いか」「相続税がかかるか」「自社株があるか」で決まります。結論から言うと、多くのケースでまず相談すべきは税理士です。争いがある場合だけ弁護士が先頭に立ち、不動産の名義変更は司法書士が実務を担い、銀行・信託銀行は手数料が高くなる傾向があるため、基本的には最後の選択肢と考えてよいでしょう。
よくある質問
Q1. 親が亡くなったら、まず誰に相談すればいいですか?
相続人同士で明らかに揉めている場合を除き、まず税理士に相談することをお勧めします。相続税がかかるかどうかの試算、申告要否の判断、必要であれば弁護士・司法書士への橋渡しまで、最初の窓口として機能するからです。
Q2. 弁護士と税理士、どちらに先に相談すべきですか?
遺産分割で相続人間の意見が対立している、あるいは対立しそうな気配があるなら弁護士が先です。弁護士は交渉・調停・遺言執行の代理人になれますが、相続税申告の代理はできません。争いがなければ税理士が先で問題ありません。
Q3. 相続税がかからなさそうでも税理士に相談する意味はありますか?
あります。相続税の基礎控除内に収まるかどうかの判定自体に専門知識が必要で、不動産や自社株の評価を誤ると「かからないはずが、かかっていた」という事態が起きます。また二次相続まで見据えた対策は、一次相続の時点で相談していないと打てない手が多くあります。
なぜ「相談先を間違える」ケースが多いのか
毎月の面談で相続の話題が出るたびに感じるのは、多くの方が「相続=弁護士」というイメージを持っているということです。ドラマや映画の影響もあるのでしょう。しかし実際に弁護士が必要になるのは、相続全体のうち相続人間で紛争性があるケースに限られます。
逆に、相続税の申告や生前の株価対策、二次相続を見据えた設計は税理士の専門領域です。ここを取り違えると、争いがないのに弁護士に依頼して費用倒れになったり、逆に揉めているのに税理士だけで進めようとして話がこじれたりします。相談先を間違えることは、時間とお金の両方を無駄にする典型的な失敗です。
専門家ごとの守備範囲を整理する
| 専門家 | 主な役割 | 相続税申告 | 遺産分割の代理 | 不動産の名義変更 |
|—|—|—|—|—|
| 税理士 | 相続税申告、生前対策、自社株評価 | ○ | × | × |
| 弁護士 | 遺産分割の交渉・調停、遺言執行 | × | ○ | × |
| 司法書士 | 相続登記、名義変更 | × | × | ○ |
| 銀行・信託銀行 | 遺言信託、相続手続き代行 | △(提携先へ外注) | × | △(提携先へ外注) |
銀行・信託銀行の「遺言信託」は便利なサービスに見えますが、実務の多くは提携する税理士・司法書士への外注です。その分の手数料が上乗せされるため、同じ内容を税理士・司法書士に直接依頼するより費用が高くなる傾向があります。相続財産の規模が大きく、窓口を一本化したい方には向きますが、コストを重視するなら専門家に直接依頼するほうが合理的な場合が多いでしょう。
ケース別・最適な相談先
- 相続人間で争いがある、または争いそうな気配がある:弁護士がまず必要です。税理士は弁護士が決めた分割内容に沿って申告書を作る役割になります。
- 不動産が多い(自宅・アパート・遊休地など):司法書士(登記)+税理士(評価・申告)の組み合わせが基本です。不動産の評価は相続税額に直結するため、税理士による評価の精度が重要になります。
- 相続税がかかる、または微妙なライン:税理士です。申告要否の判定、財産評価、納税資金の準備まで一貫して見る必要があります。
- 経営者で自社株がある:税理士です。自社株の評価は業績・株主構成・持株比率によって大きく変わり、評価方法を誤ると想定外の相続税負担や、後継者の資金繰り悪化につながります。
自社株の評価が絡む場合、生前のうちに株価そのものを引き下げる設計(持株会社化など)を検討できるかどうかで、後継者の負担は大きく変わります。この点は生前対策の具体的手法は別記事「相続税の生前対策は何から?贈与・保険・不動産の急所」で詳しく扱っていますので、そちらも参考にしてください。
相談すべきタイミングは「相続発生前」が最重要
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内が一般的な目安です(最新の税制・個別事情により異なる場合があるため、必ず最新情報で確認してください)。10ヶ月と聞くと余裕があるように感じますが、実際は財産の把握、遺産分割協議、不動産の評価、納税資金の準備までを並行して進める必要があり、あっという間に過ぎていきます。
しかし本当に重要なのは、相続発生「前」の相談です。相続税は財産の評価額に対してかかるため、評価額を下げる対策は生きているうちにしか打てません。特に自社株は業績が良いほど評価額が上がっていく性質があるため、対策を先送りする間に株価が上がり続け、後継者が背負う税負担が青天井になっていくケースを何度も見てきました。株価が上がってから慌てて対策を検討しても、選べる手段は限られます。生前対策は「まだ早い」ではなく「今が一番安い」タイミングで着手を検討する価値があるものです。
相続に強い税理士の選び方
税理士であれば誰でも相続税申告に精通しているわけではありません。選ぶ際に確認しておきたいポイントは次の通りです。
- 相続税申告の実績があるか:法人税や所得税をメインに扱う税理士と、相続税申告を継続的に手がける税理士とでは、財産評価の精度や税務調査での対応力に差が出やすい分野です。
- 書面添付制度を活用しているか:税理士が申告内容の根拠を税務署に説明する書面を添付する制度です。この制度を活用している税理士は、申告内容に一定の自信と説明責任を持っている傾向があります。制度の詳細や適用可否は個別に確認が必要です。
- 二次相続まで見据えた提案をしてくれるか:一次相続(配偶者が財産を多く相続するケース)の分割方法によって、二次相続(その後の相続)の税負担が大きく変わることがあります。一次相続の相談時点で二次相続のシミュレーションまで示してくれるかは、実力を測る一つの目安です。
経営者・資産家は「税理士法人」に相談するメリットが大きい
個人の税理士事務所でも相続税申告は可能ですが、経営者や資産家の場合は税理士法人に相談するメリットが特に大きくなります。理由は、生前対策から申告、二次相続、事業承継までを一気通貫で見る必要があるためです。
例えば自社株の評価が高くなっている中小企業のオーナー社長であれば、法人の株価対策と個人の相続対策を横断して設計する必要があります。持株会社化(ホールディングス化)による株価抑制もその一つで、純資産価額方式で評価する際に相続税評価額と帳簿価額の差額に一定の法人税等相当額(目安として約37%)を控除できる仕組みや、グループ通算制度による損益通算などを組み合わせることで、株価上昇を一定程度抑えながら事業承継を進める設計が可能になります(具体的な要件・数値は最新税制での確認が必要です)。
このような法人・個人を横断した設計は、法人税務と相続税務の両方を継続的に見ている税理士法人でなければ提案しづらい領域です。ホールディングス化の仕組みや実務上の注意点については、別記事「ホールディングス化とは|株価抑制と37%控除で事業承継対策」で詳しく解説しています。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
相続の相談先で迷ったら、まず「争いがあるかどうか」を自分の状況に当てはめて考えてみてください。争いがなければ税理士、争いがあれば弁護士がスタート地点です。そのうえで、経営者やオーナー社長であれば、相続が発生する前に一度、自社株評価と相続税の試算を税理士法人に依頼してみることをお勧めします。個別の税務判断は、顧問税理士や当法人にご相談ください。株価が今より低い今日が、対策を始める一つの目安になります。
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税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応から経営判断までを一体で支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で情報発信を行う。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。数字の裏にある経営判断を重視し、中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応を支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で、経営者に向けて税務とお金の知識を発信しています。







