創業融資面談で聞かれること|質問例・準備書類・受け答えのコツ
公認会計士・税理士の筧です。創業融資の面談で担当者が本当に見ているのは、事業への情熱でも人柄の良さでもありません。「この人にお金を貸して、期日通りに返ってくるか」を判断できるだけの数字の説明力があるかどうかです。事業計画書がどれだけ立派でも、口頭で数字の根拠を説明できなければ稟議は通りにくくなります。
よくある質問
Q. 創業融資の面談ではどんなことを聞かれますか?
自己資金の出所と金額、事業を始める動機、業界での経験、売上・利益の根拠、資金使途の内訳、毎月の返済に回せる金額、が中心です。事業計画書に書いた数字を、自分の言葉で補足説明できるかが見られます。
Q. 面談にはどんな書類を準備すればいいですか?
創業計画書(公庫所定様式など)に加えて、通帳のコピー、設備投資がある場合は見積書、店舗や事務所の賃貸借契約書、業界での職歴を示す資料、許認可が必要な業種は資格証明を用意します。数字の根拠になる資料は多いほど有利です。
Q. 自己資金が少ないと融資は通りませんか?
自己資金の絶対額よりも「その資金をどう貯めたか」が見られる傾向があります。直前に一括で入金された形跡がある場合は、いわゆる見せ金を疑われ、通帳履歴を数か月〜数年分求められることがあります。コツコツ積み立てた履歴が残っている方が評価は安定しやすいとされますが、確認方法は金融機関により異なるため、詳細は窓口や顧問税理士にご確認ください。
なぜ面談で「数字の説明力」が問われるのか
創業融資には、既存企業のような過去の決算書がありません。銀行や公庫の担当者が判断材料にできるのは、事業計画書に書かれた数字と、面談での受け答えだけです。
既存企業の融資審査では、決算書の経常利益率や自己資本比率といった財務データが評価の中心になります(この点は別記事「銀行格付けの仕組みと評価を上げる方法」で詳しく解説しています)。創業融資はその財務データがまだ存在しない分、担当者は「この経営者は自分の事業の数字を理解し、説明できる人物か」という定性評価に頼らざるを得ません。
つまり創業融資の面談は、将来の決算書がまだない段階で行われる「定性評価だけの審査」だと考えると、準備の方向性が見えてきます。売上の根拠を「なんとなくいけると思います」で終わらせず、客単価×客数×稼働日数といった積み上げ計算で説明できるかどうかが、そのまま評価の分かれ目になります。
面談で実際に聞かれる質問と回答準備
面談での質問は、おおむね次の項目に集約されます。事前に自分の言葉で答えを用意しておくと、当日の受け答えが安定します。なお、実際の重点項目は金融機関や案件によって異なるため、あくまで一般的な傾向として参考にしてください。
1. 自己資金について
- いくら準備したか、その資金の出所は何か
- 直近で大きな入金がないか(見せ金の疑いを避けるため)
準備のポイントは、通帳の入出金履歴を数か月〜数年分見返し、「毎月コツコツ貯めた」ことが分かる状態にしておくことです。親族からの借入や贈与がある場合は、その経緯も説明できるようにしておきます。
2. 開業動機・業界経験
- なぜこの事業を始めるのか
- この業界での実務経験は何年あるか
未経験の業種で融資を受ける場合は、経験不足を補う材料(業界での勤務歴、フランチャイズ加盟、経験者との共同経営など)を具体的に示す必要があります。「やる気があります」だけでは判断材料になりません。
3. 売上・利益の見込み
- 売上の根拠は何か
- 損益分岐点はどこか
「業界平均だから」「周りの店がこれくらいだから」という説明は弱く見られます。客単価、想定客数、稼働日数、原価率など、自社の条件に基づいた積み上げ計算で説明できるかが問われます。
4. 資金使途と返済計画
- 借りたお金を何に使うのか(設備資金か運転資金か、内訳は)
- 毎月いくら返済できるのか
資金使途は見積書などの根拠資料とセットで説明します。返済計画は、事業計画書上の利益からではなく、実際に手元に残る現金ベースで無理のない金額を示すよう心がけてください。
5. 個人の支出状況
- 自宅の家賃、生活費はいくらか
- 他に借入やクレジットカードの延滞はないか
事業の数字だけでなく、経営者個人の生活費の見通しも、返済原資の余力として見られています。事業の利益がそのまま個人の生活費に消えてしまう計画は、返済能力に疑問を持たれやすくなります。
準備すべき書類の一覧
| 書類 | 目的 |
|—|—|
| 創業計画書(公庫所定様式など) | 事業内容・数字の根拠を示す基本資料 |
| 通帳のコピー | 自己資金の出所・積立の経緯を示す |
| 見積書 | 設備投資の資金使途を裏付ける |
| 賃貸借契約書 | 店舗・事務所の家賃負担を示す |
| 職歴・経歴を示す資料 | 業界経験の裏付け |
| 資格証明(該当業種のみ) | 許認可が必要な事業であることの証明 |
書類はそれぞれ単体で提出するのではなく、面談で聞かれる質問と1対1で対応させておくと、当日「この資料を見てください」とすぐ提示でき、印象が良くなります。
面談の受け答えで印象を左右するポイント
面談の場では、事業計画書に書いた数字よりも、その数字を自分の言葉で補足できるかどうかが見られています。これは既存企業の融資担当者が「経営者が数字と戦略を自分の言葉で説明できるか」を重視するのと同じ発想です。担当者は最終的に稟議書を書く立場にあり、経営者の説明が曖昧だと、担当者自身が上席にその事業を説明できません。
具体的には次の点に気をつけます。
- 事業計画書の数字を丸暗記するのではなく、根拠を説明できるようにしておく
- 想定外の質問(「もし売上が半分だったらどうしますか」等)にも、その場で数字を組み立て直して答える練習をしておく
- 弱み(未経験、自己資金の少なさ等)を隠すのではなく、どう補うかをセットで説明する
逆に印象を悪くしやすいのは、「事業計画書に書いてある通りです」としか答えられない場合や、数字の根拠を聞かれて言葉に詰まる場合です。担当者から見ると「決算書がない分、この人の説明力だけが判断材料」なので、ここでの印象がそのまま審査結果に直結しやすくなります。
経営判断としての意味:面談は「最初の決算書」の前哨戦
創業融資の面談を無事通過しても、そこで終わりではありません。事業を始めた後、最初の決算書が出た時点から、今度は既存企業と同じ「格付け」による評価が始まります。経常利益率、自己資本比率、債務償還年数といった指標で、銀行との関係が更新されていきます。
創業融資の面談で鍛えられる「数字を自分の言葉で説明する力」は、そのまま創業後の決算書説明の練習にもなります。面談で使った積み上げ計算の考え方は、創業後の月次試算表を見るときにも使えますし、面談で聞かれた「返済に回せる金額」の感覚は、そのまま創業後の資金繰り管理に直結します。
面談対策を単なる通過儀礼と捉えず、その後何年も続く銀行との付き合い方の土台作りだと考えると、準備の質が変わってきます。具体的な準備内容や自己資金の見せ方に不安がある場合は、顧問税理士や当法人にご相談ください。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
事業計画書に書いた売上・利益の数字を、誰かに口頭で説明する練習を今日一度やってみてください。積み上げの根拠を言葉にできない部分があれば、そこが面談で最も突っ込まれる弱点です。書類が整っていても、口頭説明が曖昧なままでは面談を通過しにくくなります。
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