生前贈与の非課税枠と2024年改正。暦年贈与と相続時精算課税の使い分けを整理する
公認会計士・税理士の筧です。
2024年改正でタイミングにより最適解が逆転しました。「どちらの制度でいくら贈与すると相続税がどれだけ減るか」を試算し、名義預金など否認リスクも回避する設計を無料相談でご提案します。
生前贈与は相続税対策の王道ですが、2024年1月の改正で「暦年贈与」と「相続時精算課税」のルールが大きく変わり、これまでの”とりあえず毎年110万円ずつ贈与”という定石が通用しにくくなりました。改正を踏まえて正しく使い分けないと、せっかくの贈与が相続時に持ち戻されて節税にならない、ということも起こります。本記事では、2つの贈与制度の非課税枠と、2024年改正のポイント、そしてどちらを選ぶべきかを整理します。
よくある質問
Q. 生前贈与の非課税枠はいくらですか?
どちらの制度を使うかで変わります。暦年贈与なら「年110万円まで」贈与税がかかりません。2024年からは相続時精算課税にも「年110万円の基礎控除」が新設され、こちらは贈与税も相続税もかからず、相続財産にも加算されません。つまり非課税枠の”110万円”は同じでも、相続時の扱いが大きく違うのがポイントです。
Q. 2024年の改正で何が変わったのですか?
大きく2つです。①暦年贈与は、相続開始前の贈与を相続財産に持ち戻す期間が「3年」から「7年」に延長されました(延長された4年分は総額100万円まで加算しません)。②相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」が新設され、この枠内の贈与は相続財産に加算されなくなりました。結果として、相続が近い方は相続時精算課税の110万円枠が有利になりやすくなりました。
Q. 暦年贈与と相続時精算課税は、どちらが得ですか?
一概には言えず、「相続まで年数があるか」「贈与したい財産の性質」で変わります。まだ何十年も先の相続に向けて早くから計画的に贈与するなら暦年贈与、相続が近い・まとまった財産を早く移したいなら相続時精算課税、が大まかな目安です。ただし相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻れないなどの注意点があるため、選択前に必ず試算が必要です。
Q. 生前贈与で一番多い失敗は何ですか?
「贈与したつもりが認められない」ケースです。親が子名義の口座にお金を入れているだけで、子が管理していない”名義預金”は、贈与と認められず相続財産に含められます。贈与契約書を作る、受贈者本人が管理する口座に振り込む、といった証拠を残すことが欠かせません。
生前贈与の2つの方法:暦年贈与と相続時精算課税
生前贈与には、大きく2つの課税方式があります。
- 暦年課税(暦年贈与):1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計が110万円を超えた分に贈与税がかかる方式。毎年コツコツ贈与していく王道です。
- 相続時精算課税:60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べる方式。累計2,500万円まで贈与税がかからず(超えた分は一律20%)、贈与した財産は相続時に相続財産へ加算して精算します。
このどちらを選ぶかで、非課税枠の使い方と相続時の扱いが変わります。
暦年贈与:年110万円の非課税枠と「7年内加算」への改正
暦年贈与は、受け取る人ごとに年110万円までなら贈与税がかからず、申告も不要です。長い年数をかけて複数人に贈与すれば、大きな財産を無税で移せるのが強みでした。
ただし2024年の改正で、相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に持ち戻される(生前贈与加算)ルールが、従来の「3年」から「7年」へ延長されました。延長された4年分については、合計100万円までは加算されません。
これにより、「相続が近づいてから慌てて暦年贈与をしても、7年以内なら相続財産に戻されて節税にならない」ケースが増えます。暦年贈与は、元気なうち・相続までまだ年数があるうちに、早くから計画的に始めることがこれまで以上に重要になりました。
相続時精算課税:2024年から年110万円の基礎控除が新設
相続時精算課税は、これまで「累計2,500万円まで非課税だが、贈与した分はすべて相続財産に加算される」制度で、節税効果が限定的とされてきました。
しかし2024年から、相続時精算課税にも「年110万円の基礎控除」が新設されました。この110万円の枠内の贈与は、贈与税がかからないだけでなく、相続財産にも加算されません(=相続税もかからない)。しかも暦年贈与のような「持ち戻し」の対象外です。
そのため、相続が近い方にとっては、相続時精算課税の110万円枠を使ったほうが有利になりやすいという、これまでと逆の判断になるケースが出てきました。
どちらを選ぶ?ケース別の使い分け
- 相続までまだ十分な年数がある(贈与者が若い・健康) → 暦年贈与で、複数人に長期間コツコツ贈与するのが有利になりやすい。
- 相続が近い・高齢である → 相続時精算課税の年110万円枠のほうが、持ち戻しされず有利になりやすい。
- 値上がりが見込まれる財産(自社株・不動産)を早く移したい → 相続時精算課税で低い評価額のうちに移す選択肢がある。
- 毎年の贈与を確実に非課税で積み上げたい → 制度選択と証拠づくりを専門家と設計する。
注意点として、相続時精算課税は一度選ぶとその贈与者からの贈与について暦年課税に戻せません。選択は慎重に、必ず試算のうえで判断してください。
生前贈与でよくある失敗
- 名義預金:子・孫名義の口座に入れているだけで本人が管理していないと、贈与と認められず相続財産に含まれます。
- 証拠が残っていない:贈与契約書がなく、受贈者が使える状態になっていないと、税務調査で否認されることがあります。
- 定期贈与とみなされる:「毎年100万円を10年」と最初に約束していたとみなされると、初年に一括で贈与税がかかる可能性があります。
こうした急所を含め、贈与・保険・不動産を組み合わせた対策の全体像は相続税の生前対策は何から?贈与・保険・不動産の急所で解説しています。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
2024年の改正で、生前贈与は「早く始めるほど暦年贈与が効き、相続が近いなら相続時精算課税の110万円枠が効く」という、タイミングで最適解が変わる時代になりました。まずは、ご自身の年齢・相続までの想定年数・移したい財産を整理し、「暦年か、精算課税か」の方向性を決めることから始めてください。
制度選択は一度決めると後戻りできない部分があり、家族構成や財産の内容によって最適解が変わります。税理士法人グランサーズでは、生前贈与のシミュレーション(どちらの制度でいくら贈与すると、相続税がどれだけ減るか)を無料相談で承っています。誰に・いつ・どう相談すべきか迷う場合は、相続の相談先はどこがいい?もあわせてご覧ください。まずはお気軽にご相談ください。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応から経営判断までを一体で支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で情報発信を行う。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。数字の裏にある経営判断を重視し、中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応を支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で、経営者に向けて税務とお金の知識を発信しています。







