人間ドック費用は経費にできる?役員のみの会社の注意点

人間ドック費用は経費にできる?役員のみの会社が注意すべき3つの条件

公認会計士・税理士の筧です。

人間ドックや健康診断の費用は、条件を満たせば法人の福利厚生費として経費にできます。ポイントは「全員を対象にしているか」「金額が常識的な範囲か」「会社が直接支払っているか」の3つで、これを外すと役員・従業員個人への給与として課税される「現物給与」認定を受けます。役員しかいない一人会社でも経費にできる余地はありますが、判断を間違えると税務調査で最初に狙われる論点になります。

よくある質問

Q. 役員しかいない会社でも人間ドックの費用は経費にできますか?

できます。ただし「役員だから特別に」ではなく、「その会社にたまたま従業員がおらず、結果として役員だけが対象になっている」という整理が必要です。従業員がいるのに役員だけ受診させ、従業員には案内すらしていない場合は否認リスクが高くなります。

Q. 人間ドックの費用はいくらまでなら経費として認められますか?

明確な上限金額は定められておらず、「社会通念上相当な範囲」かどうかで判断されます。一般的な人間ドックのコースを大きく超えるオプション検査や、人間ドックに付随した豪華な宿泊・食事などを含めると、その超過部分が給与課税の対象と見られやすくなります。

Q. 従業員が立て替えて、後日会社が精算する場合も経費になりますか?

リスクがあります。福利厚生費として扱うためには、会社が医療機関へ直接費用を支払う形が望ましいとされています。従業員に一旦現金で受診料を払わせて、後で会社が同額を渡す形にすると、実質的に「現金を渡した」現物給与として判定される可能性があります。

なぜ人間ドックの経費化は税務調査で狙われやすいのか

毎月の面談で「役員の人間ドック代を経費にしていいか」という相談は本当によく出ます。理由は単純で、金額がそれなりに大きく(一般的な人間ドックで数万円〜)、かつ「全員が対象」「直接支払い」といった要件を厳密に理解しないまま経理処理している会社が多いからです。

税務調査官の視点では、人間ドックの経費計上は「福利厚生費という名目の、役員への実質的な利益供与ではないか」を確認する定番の論点です。特に一人会社・役員のみの法人は、そもそも「福利厚生」という言葉が成立するのかという構造的な疑問を持たれやすく、指摘の入り口になりやすい項目です。

経費として認められるための3つの条件

1. 全従業員を対象にすること

原則として、その会社に在籍する従業員全員(または一定の年齢以上の従業員全員など、合理的で恣意性のない基準)が対象になっている必要があります。特定の役員だけ、特定の管理職だけを対象にすると、その費用は対象者個人への給与とみなされます。

役員のみの会社の場合、「従業員がいないため結果的に役員だけが対象になっている」のであれば、この要件を満たすと考えられます。逆に、従業員がいるのに役員だけ受診させている場合は、この時点で要件を満たしません。

2. 著しく高額でないこと

一般的な人間ドックの費用相場から大きく外れていないかが問われます。基礎的な健診項目に加えてオプション検査を付ける会社は多いですが、豪華な宿泊付きプランや、通常の人間ドックとは言えないような検査まで含めると、その超過部分が個人の利益とみなされるリスクが上がります。

金額の絶対的な線引きはなく「社会通念上相当かどうか」という抽象的な基準で判断されるため、この点は判断に迷うところです。福利厚生規程で対象範囲・上限金額の目安を明文化しておくと、調査時の説明がしやすくなります。

3. 会社が医療機関に直接支払うこと

福利厚生費として扱うためには、会社が費用を医療機関に直接支払う形が基本です。従業員や役員個人が一旦立て替えて、後日会社が同額を精算する運用は、実質的に現金を渡したのと変わらないとみなされ、給与課税の対象になりやすい点に注意が必要です。

給与課税(現物給与)されるとどうなるか

要件を満たさず給与課税と判定されると、その人間ドック代は「福利厚生費」ではなく「役員報酬」または「給与」として扱われます。ここで実務上のインパクトが出るのは次の3つです。

  • 源泉徴収漏れ:本来源泉徴収すべき給与として扱われるため、追徴と延滞税・不納付加算税の対象になります。
  • 役員報酬の定期同額給与の崩れ:役員の場合、期中に突発的に発生した現物給与とみなされると、定期同額給与の要件から外れ、その分の損金算入が認められない可能性があります。
  • 社会保険への影響:現物給与として標準報酬月額の算定対象に含まれる可能性があり、会社・本人双方の社会保険料負担が増える場合があります。

福利厚生費で経費にできると思っていた金額が、法人税の追加負担・社会保険料の遡及・延滞税という形で跳ね返ってくると、想定していなかった資金繰りの穴になります。特に人間ドックは毎年発生する費用なので、判定を誤ったまま数年運用していると、調査時にまとめて指摘され、複数年分の追徴になる点は覚えておく必要があります。

銀行対応・経営判断への翻訳

決算書の福利厚生費が急に膨らんだり、役員報酬に対して不自然に高い比率になっていたりすると、金融機関側も「実質的な役員報酬の付け替えではないか」という目で見てきます。特に一人会社や役員のみの法人は、この科目の使い方が会社の経理の丁寧さを測る一つの指標として見られがちです。

経営判断としては、次の3点をやっておくと調査・銀行対応の両方で説明力が上がります。

  • 福利厚生規程を作り、対象者の範囲(全従業員、または合理的な年齢基準)と金額の目安を明文化する
  • 受診者リストと領収書・請求書を、誰の分をいくら会社が負担したか分かる形で保存する
  • 支払いは会社から医療機関への直接支払いに統一し、個人への現金精算は避ける

まとめ:まず一つだけやるとしたら

まずは、自社の人間ドック・健康診断の費用が「全員が対象」「金額が常識的」「会社から医療機関への直接支払い」の3条件を満たしているか、今年度分の領収書と支払い方法を1件ずつ見直してください。役員のみの会社であっても、この3条件を満たしていれば経費計上できる余地は十分にあります。逆に、立て替え精算になっているものが1件でもあれば、来期からは支払いフローそのものを見直す価値があります。個別の判断に迷う場合は、顧問税理士・当法人にご相談ください。

💬 個別のご相談は初回無料相談で承っています → https://tax-co.grancers.co.jp/contact/

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監修:筧 智家至(かけひ ちかし) 公認会計士・税理士

税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士。中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応から経営判断までを一体で支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で情報発信を行う。

この記事を書いた人
筧 智家至

公認会計士・税理士:筧 智家至

税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士。数字の裏にある経営判断を重視し、中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応を支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で、経営者に向けて税務とお金の知識を発信しています。

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