法人携帯の経費、会社名義と個人名義で何が違う?
公認会計士・税理士の筧です。
結論から言うと、法人名義のスマホなら通信費も本体代も原則経費にできます。個人名義でも業務利用分は按分して経費計上できますが、家族名義や役員の個人契約になると一気に否認リスクが上がります。ポイントは名義そのものより「業務で使っている証拠を出せるか」です。
よくある質問
Q. 個人名義のスマホでも会社の経費にできますか?
できます。ただし個人名義の場合、契約者は会社ではないため「業務でどれだけ使ったか」を自分で説明する必要があります。通話明細やアプリ利用履歴、業務での連絡実態などから合理的な業務比率を決め、その割合分だけを会社に請求(精算)する形が基本です。全額を経費にすると、私用分まで会社が負担していると見なされるリスクがあります。
Q. 私用と混ざっている場合、按分はどう決めればいいですか?
「何割が業務か」を裏付けられる根拠を持つことが先決です。営業職で日中ほぼ外出先から取引先に連絡している社長なら業務比率は高く説明しやすく、逆に事務所に常駐して固定電話がある役職者だと業務利用の説明は難しくなります。按分割合そのものより、なぜその割合にしたかを一行メモや業務日誌で残しておけるかが調査での分かれ目です。
Q. 家族名義の携帯を会社の経費にしても大丈夫ですか?
原則おすすめしません。契約者が会社でも役員でもない家族である場合、そもそも「誰が」「何のために」使っている費用なのかの説明が一段難しくなります。家族が実際に事業に従事していて業務用として使っているなら別ですが、その場合も職務の実態と金額の相当性を求められる点は、家族への給与や役員報酬の判断と同じです。
なぜ「法人携帯」は毎回の面談で議題に上がるのか
法人携帯の扱いは、金額の大小に関わらず必ず一度は確認したいテーマです。理由は単純で、経営者本人も経理担当も「なんとなく経費にしている」ケースが多いからです。
経費として認められる条件はシンプルで、①事業との関連性を説明できるか、②領収書・契約書などの証拠があるか、の2つです。金額の大きさよりも、この2つが揃っているかどうかで判断が分かれます。携帯代は毎月発生する定額の支出なので「いつもの通信費」として思考停止で経費計上されがちですが、税務調査ではむしろこうした「習慣化した処理」ほどチェックされます。
会社名義と個人名義:経費にできる範囲の違い
まず整理すべきは名義です。
- 会社名義で契約している場合:通信費も本体代も、原則として全額会社の経費で問題ありません。ただし私的な利用が明らかに多い場合(例えば家族の連絡専用になっているなど)は、業務外部分を役員報酬扱いにする可能性が出てきます。
- 役員個人が契約している携帯を会社に請求する場合:業務利用分の按分計算が前提になります。全額請求すると、私用分まで会社が負担しているとみなされるリスクがあります。
会社名義にしておいた方が管理も税務上の説明もシンプルになる、というのが現場での実感です。個人名義のまま経費精算を続けると、按分の根拠を毎回説明できる状態を維持しないといけないため、担当者が変わったタイミングなどで管理が崩れやすいという弱点もあります。
私用が混ざる場合の按分の考え方
按分で大事なのは「割合の正しさ」よりも「割合を決めた根拠」です。事務所の家賃を面積割合で按分するのと同じ発想で、携帯代も業務での利用実態から比率を決めます。
例えば以下のような目安で考えることができます(あくまで一般的な考え方であり、実態に即して個別に判断すべきものです)。
- 外回り中心の営業職で、取引先との連絡がほぼスマホ経由:業務比率を高めに設定しやすい
- 事務所に常駐し、固定電話やPCメールが主な連絡手段:業務比率は低めに見られやすい
- 経営者で、深夜・休日も含めて取引先や金融機関とのやり取りが多い:業務比率を高めに説明できる場合がある
大切なのは、その比率を決めた理由を一行でもメモに残しておくことです。「〇割は業務利用(理由:主要取引先との連絡は全てこの番号)」といった記録があるかどうかで、調査官への説明力が変わります。
本体代の扱い:少額減価償却の特例を使う
スマホ本体の購入費用についても、業務使用分を按分して経費にする考え方は通信費と同じです。加えて本体代については、一般的な目安として取得価額が30万円未満程度であれば、中小企業者等を対象とした少額減価償却資産の特例により、その事業年度に一括で経費化できる制度があるとされています(年間合計300万円程度が上限の目安とされています)。この金額基準や適用要件は最新税制で必ずご確認ください。
一般的なスマホの本体価格であれば、この特例の対象に収まるケースが多いはずです。ただし本特例は適用要件や上限額が改正される可能性があるため、購入時点の最新の制度内容を必ず確認してください。
家族名義・役員個人契約のリスク
家族名義の携帯を会社の経費にするケースは、按分の話とは別の次元でリスクが高くなります。理由は、契約者が事業に直接関与していない家族である場合、「誰の業務のために」使っている費用なのかという説明の出発点自体が崩れやすいからです。
家族が実際に事業に従事していて、その業務のために携帯を使っているのであれば話は別ですが、その場合も職務の実態(何を担当しているか)と金額の相当性(その業務内容に見合った金額か)を説明できる状態にしておく必要があります。これは家族への給与や役員報酬の判断基準と同じ発想です。
役員個人が契約している携帯を会社に請求する場合も、按分の根拠が曖昧なまま「毎月〇円」を定額請求していると、実態のない経費精算として指摘される可能性があります。
税務調査で見られるポイントと否認時のインパクト
税務調査で法人携帯が問題になるのは、ほぼ次の2パターンです。
1. 私用の割合が高いのに全額を経費にしている
2. 家族名義や個人契約で、業務利用の実態を説明できる資料が何もない
グレーゾーンの判断軸は「調査官に説明できるかどうか」に尽きます。仮に携帯代の否認額自体は小さくても、按分の根拠がまったくない状態は「他の経費処理も同様にずさんではないか」という疑いを招き、調査全体の突っ込みが厳しくなる引き金になり得ます。
さらに、名目を偽って全額を経費にしていたと判断されれば、重加算税(本税の35〜40%程度が上乗せされるとされています。税率は最新税制で要確認です)の対象になるリスクもあります。重加算税が一度課されると、その後数年は再調査の対象になりやすくなる点も見過ごせません。金額の大小ではなく「説明できる状態にしておくこと」が、資金繰りにも銀行対応にも直結する経営判断だと考えてください。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
法人携帯は会社名義に統一し、私用利用がある場合は業務比率を決めた理由を一行メモで残しておく。これだけで税務調査での説明力は大きく変わります。まずは自社の携帯契約が誰の名義になっているかを一度確認してみてください。個別の判断に迷う場合は、顧問税理士または当法人にご相談ください。
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