公認会計士・税理士の筧です。会社設立は、書類がそろえば最短3日ほどで登記申請まで進められますが、「個人事業主のまま続けるか法人化するか」「株式会社か合同会社か」「資本金をいくらにするか」で、その後の税負担が大きく変わります。このガイドでは、会社設立の判断・費用・流れ・必要書類から、設立時に押さえたい節税まで、税理士の視点で一気に整理します。
よくある質問
Q. 個人事業主と会社、どちらが得ですか?
一般的な目安は売上高1,000万円以上・利益400万円以上で、法人化のメリットが出やすいと言われます。法人は経費にできる範囲が広く節税の選択肢が増える一方、設立・維持のコストがかかります。
Q. 会社設立にいくらかかりますか?
自分で手続きする場合の目安は、株式会社で約20〜30万円、合同会社で約6〜10万円です(内訳は下の早見表)。専門家に依頼する場合は別途報酬がかかります。
Q. 資本金はいくらにすべきですか?
1円以上で設立できます。ただし資本金1,000万円未満なら設立当初の消費税が原則免税になるため、1,000万円未満に抑えるのが一般的です。対外的な信用や許認可の要件も踏まえて決めます。
Q. どれくらいの期間でできますか?
印鑑証明などの書類がそろえば、順調にいけば最短3日程度で登記申請まで進められます。
個人事業主と法人、どちらを選ぶか(早見表)
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社) |
|---|---|---|
| 開業手続き・初期費用 | 届出のみ・費用はほぼ0 | 設立費用が約6〜30万円かかる |
| 経費にできる範囲 | 収入に直接関連する費用 | 事業に関連する支出を広く経費化できる |
| 消費税 | 基準期間の売上で判定 | 資本金1,000万円未満なら設立当初は原則免税 |
| 社会的信用 | 相対的に低い | 高い(取引・融資・採用で有利) |
| 法人化の目安 | 売上1,000万・利益400万円 未満 | 売上1,000万・利益400万円 以上 |
会社設立の費用(自分で手続きする場合の目安)
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証(公証人) | 手数料+印紙4万円(電子定款なら印紙不要) | 不要 |
| 登録免許税(登記) | 資本金×0.7%(最低15万円) | 資本金×0.7%(最低6万円) |
| 合計の目安 | 約20〜30万円 | 約6〜10万円 |
※電子定款で作成すると、定款に貼る印紙代4万円が不要になります。専門家に依頼する場合は上記に報酬が加わりますが、電子定款の印紙代節約や手続きの手間削減で、実質的な差が小さくなることもあります。
会社設立の流れ(最短3日)
1日目:市区町村役場で発起人・代表取締役の印鑑証明を取得。法務局出張所で類似商号を調査し、必要書類を入手。定款を作成・製本する。
2日目:定款を公証人役場で認証(株式会社の場合)。銀行で資本金を払い込み、払込証明書と「資本金の額が会社法・会社計算規則に従って計上されたことを証する書面」、株式会社設立登記申請書、印鑑届書を作成する。
3日目:法務局で登記申請を行う。申請書に収入印紙を貼付し、定款・払込証明書・代表取締役の印鑑証明書・印鑑届書などをあわせて提出する(郵送も可)。
必要書類(設立登記と設立後の届出)
設立登記で必要な主な書類:株式会社設立登記申請書、定款謄本、払込証明書、発起人決定書、代表取締役の印鑑証明書、印鑑届書 など。法務局に提出した書類は戻らないため、原本還付の手続き(コピーに「原本と相違ない」旨を記載し代表社印を押印)をしておくと安心です。
設立後の主な届出(期限に注意):法人設立届出書(税務署・都道府県・市区町村)、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、社会保険の新規適用届(適用事業所となった日から5日以内 等)。期限が短いものが多いため、設立直後にまとめて手続きするのが安全です。
定款の作成で決めること
定款は会社の組織・運営の基本ルールをまとめた書面です。主に次の事項を決めます。
- 商号(会社名):登記する住所の管轄法務局で類似商号を事前に調べておく。
- 本店所在地:会社の住所。
- 目的:設立時の事業だけでなく、今後展開したい事業も記載。許認可が必要な事業に注意。
- 役員:取締役・監査役などの構成と任期。
- 資本金・発行可能株式数・発行価額。
資本金の決め方
資本金は1円以上あれば設立できます。金額を決める際のポイントは主に2つです。
① 消費税:資本金1,000万円未満なら、売上高が1,000万円以上にならない限り、設立当初の消費税は原則免税になります。資本金1,000万円以上だと初年度から消費税の納税義務が生じます。
② 信用・許認可:取引先や金融機関からの信用、許認可の要件を満たす金額かも考慮します。
役員と印鑑
役員:取締役会を設けない会社なら取締役は1名以上でOKで、1名でも代表取締役と称することができます。取締役会を設ける場合は取締役3名以上・監査役1名以上が必要です。
印鑑:会社の実印を登録するため、登記申請とあわせて「印鑑届書」を提出します。届け出るのは会社の代表者印です。
会社設立時に押さえたい節税
経費の範囲が広がる:法人は事業に関連する支出を広く経費にできます。ただし事業との関連性を説明でき、証拠を残せることが前提です(私的な支出は経費になりません)。
個人契約を法人契約に切り替える:自宅の家賃や携帯電話代など、これまで個人契約だったものを法人契約にすると経費にしやすくなります。設立のタイミングで見直すのがおすすめです。
青色申告:複式簿記で正しく記帳することで、欠損金の繰越をはじめ多くの税務上の特典を受けられます。記帳の手間はかかるため、節税額や人件費と比べて有利なら税理士へ記帳・申告を委託する方法もあります。
資本金1,000万円未満で当初消費税免税:前述のとおり、設立時の資本金設計は消費税に直結します。
まとめ
会社設立の手続き自体は数日でできますが、「法人化の判断・資本金の額・株式会社か合同会社か」といった設計で、その後の税負担が大きく変わります。設立前に一度税理士に相談することで、節税と手続きの両面で有利に進められます。会社設立や法人化をご検討の方は、お気軽にご相談ください。






