役員退職金の相場と決め方。功績倍率・損金算入限度額の計算と税金を整理する
公認会計士・税理士の筧です。
功績倍率・損金算入限度額・支給タイミングは会社の利益と承継計画で最適解が変わります。自社の数字で「いくらまで損金にできるか」を具体的に試算し、否認されない設計を無料相談でご提案します。
「役員退職金はいくらまで払えるのか」「税務署に否認されないか」——役員退職金は金額が大きく、会社にとっては大きな損金、社長個人にとっては税優遇の効いた受け取りになるため、設計を誤ると数百万〜数千万円単位で結果が変わります。本記事では、相場の考え方、損金にできる限度額の計算式、役職別の功績倍率の目安、そして否認されないための注意点を実務目線で整理します。
よくある質問
Q. 役員退職金に「相場」はありますか?
金額そのものの決まった相場はありません。役員退職金は「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」という功績倍率法で算定するのが一般的で、同じ勤続年数でも報酬月額と功績倍率で金額は大きく変わります。つまり相場を金額で語るより、「自社の数字を計算式に当てはめるといくらになるか」で考えるのが正解です。
Q. いくらまで損金にできますか?
明確な上限額が法律で定められているわけではなく、「不相当に高額」と判断された部分が損金不算入になります。実務では功績倍率法で計算した金額が一つの目安になり、これを大きく超えると否認リスクが高まります。逆に、計算式の範囲内で、株主総会の決議など手続きを踏んでいれば、まとまった金額を損金にできます。
Q. 役員退職金は税金面で有利と聞きましたが、本当ですか?
はい。受け取る社長個人の側で、退職所得は「退職所得控除」を差し引いたうえで、さらに残りの2分の1だけが課税対象となり、他の所得と分離して課税されます。給与や配当で同額を受け取るよりも手取りが大きくなりやすく、これが役員退職金が節税・資産形成の武器と言われる理由です。
Q. 退職金を払うと自社株の評価も下がるのですか?
下がります。多額の退職金を損金計上すると、その期の利益と純資産が減り、自社株の評価額が一時的に下がります。この評価が下がったタイミングで後継者へ株式を移せば、贈与税・相続税を抑えられます。事業承継とセットで設計する価値が大きい理由です。
役員退職金の相場に「決まった金額」はない。基準は功績倍率
まず押さえるべきは、「役員退職金は◯◯万円が相場」という金額の目安は存在しない、ということです。同じ社長でも、報酬月額80万円・勤続20年の方と、報酬月額150万円・勤続30年の方では、適正額はまったく違います。
判断の基準になるのが功績倍率法という考え方で、次の計算式で「不相当に高額でない範囲」の目安を出します。
損金算入限度額の計算:最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
役員退職金の適正額(損金にできる目安)は、一般的に次の式で計算します。
役員退職金の目安 = 最終報酬月額 × 役員勤続年数 × 功績倍率
たとえば、最終報酬月額100万円・勤続25年・功績倍率3.0の社長なら、
100万円 × 25年 × 3.0 = 7,500万円
がひとつの目安になります。この範囲内であれば、株主総会の決議など適正な手続きを踏むことで損金算入が認められやすく、これを大きく超える部分は「不相当に高額」として否認されるリスクが高まります。
功績倍率の目安(役職別)と業種による違い
功績倍率は、役職に応じて次の水準が実務上の目安としてよく使われます(※法令で定められた数値ではなく、判例・慣行に基づく一般的な目安です)。
- 社長・代表取締役:3.0 前後
- 専務取締役:2.4 前後
- 常務取締役:2.2 前後
- 平取締役:1.8 前後
- 監査役:1.6 前後
ただし、これはあくまで目安です。会社の規模・利益水準・その役員の会社への貢献度、同業他社の水準などを総合的に見て判断されます。過度に高い倍率を使うと否認リスクが上がるため、自社の実態に即した設定が重要です。
「不相当に高額」と否認されないための注意点
役員退職金でもっとも多いトラブルが、「払ったが損金として認められなかった」というケースです。防ぐための急所は次のとおりです。
- 株主総会で決議し、議事録を残す:金額・支給時期・算定根拠を明確にしておく。
- 功績倍率法の範囲を大きく超えない:目安を超える特別功労金を上乗せする場合は、その根拠を説明できるようにする。
- 退職の実態がある:分掌変更(代表を退いて非常勤になる等)で退職金を出す場合は、実際に経営から退いた実態が必要。名目だけの変更は否認されます。
「不相当に高額」と判断される具体的なラインについては、役員退職金で不相当に高い金額とは?でも解説していますので、あわせてご確認ください。
役員退職金は「節税」と「事業承継」の両方に効く
役員退職金の本当の価値は、単なる退職金にとどまりません。
- 会社:多額の損金を計上でき、その期の法人税を抑えられる。
- 社長個人:退職所得控除+2分の1課税で、手取りが給与より大きくなりやすい。
- 事業承継:退職金で利益・純資産が減った期に自社株の評価が下がるため、そのタイミングで後継者へ株式を移せば承継コストを抑えられる。
この「退職金で株価を下げて承継する」設計は、事業承継の王道の一つです。詳しくは役員退職金で自社株評価を下げる事業承継の株価対策で解説しています。
まとめ:まず一つだけやるとしたら
役員退職金は、「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で自社の目安額をまず計算してみることから始めてください。そのうえで、株主総会の決議・議事録・退職の実態という手続き面を固めれば、大きな損金と個人の税優遇、さらに事業承継の株価対策までを一度に実現できます。
一方で、金額の設定・功績倍率・支給のタイミングは、会社の利益状況や承継計画によって最適解が変わり、誤ると否認や余計な税負担につながります。税理士法人グランサーズでは、役員退職金の設計を、法人税・所得税・事業承継まで一体で無料相談にて承っています。「いくらまで払えるか」「いつ払うのが得か」を、自社の数字で具体的にお示ししますので、まずはお気軽にご相談ください。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応から経営判断までを一体で支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で情報発信を行う。
税理士法人グランサーズ所属の公認会計士・税理士、BackofficeForce株式会社 代表取締役CEO。数字の裏にある経営判断を重視し、中小企業オーナーの税務・資金繰り・銀行対応を支援。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」で、経営者に向けて税務とお金の知識を発信しています。







