前回、発生主義について考えましたが、そこでは「前払費用」は支払ったときではなく、発生したときに費用に計上するものと述べました。確かにその通りなのですが、一定の条件を満たすものは、支払ったときに費用として計上できるという特例があります。
簡単な例を考えましょう。月10万円の事務所を借りている3月決算の会社が、2月に年払い契約に変更、3月から翌年2月までの1年分の家賃120万円を3月1日に前払いした場合、1年分の家賃にもかかわらず、支払ったときの費用として計上できるということです。当期に利益が出ていれば、120万円×税率30%=36万円の税金を減らせる計算となります。家賃が月30万円だったら・・・。そうです!!100万円を超える節税ができる計算になりますね。これが「短期前払費用の特例」です。
では「短期前払費用の特例」に該当する条件や留意点を見てみましょう。
条件は、以下の通りです。
- ①前払費用の額で、
- ②その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において
- ③その支払った金額を継続してその事業年度の損金の額に算入しているとき」
上記に該当する場合は、支払時点で税務上の費用である損金となります。
①条件は前払費用に該当するものという条件で、前払費用については前回から述べている内容です。
②の留意点は、1年以内でなければならないという点です。例えば2月に4月から翌年3月までの家賃を支払っても特例は適用できません。また、5年分の前払いといった場合にも特例は適用できません。
③の留意点としては、継続的に処理しなければならないため、「利益が出た年は年払い、利益が出ない年には月払い」は認められませんし、資金繰りも考えなければなりません。さらに、④として「収益に対応させる必要のある費用ではないこと」という条件もあります。例えば、マンションを転貸している場合、たとえ賃料1年分を前払いしても、毎月の転貸収入と対応させて費用計上しなければならず、短期前払費用の特例は適用できないということです。
条件、留意点はあるものの、節税対策として有用な方法の一つです。家賃だけではなく、保険料や会費、専門誌の年間購読料など、どの会社でもあるような費用にも使えます。身近なところからできる節税もありますので、一度考えてみるのもいいですね!!