収益・費用の計上方法として、「発生主義」という考え方があります。会社は、発生主義による処理が求められており、これを知っていることでできる節税もあり、逆にこれを知らないと税金が増えてしまうこともあります。今回は、まず「発生主義」が何かについて考えてみます。
「発生主義」は、収益および費用を発生時点で、または発生期間に認識する会計処理をいいます。ポイントは、現金収支があるなしにかかわらず、発生した時に収益・費用を計上するという点です。発生主義で処理する場合には、「前払費用」(資産)、「前受収益」(負債)、「未収収益」(資産)、「未払費用」(負債)という勘定科目が出てきます。これらは「経過勘定」と呼ばれています。
ちなみに、伝統的な会計基準である企業会計原則の中にも「すべての費用および収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」として記載されているように、発生主義による処理が求められています。
この発生主義と並べて説明されるものが「現金主義」です。「現金主義」は、収益を現金の収入時点で認識し、費用を現金の支出時点で認識する会計処理をいいます。現金主義で処理すれば収入時または支出時の一回で済みますので、簡単に処理ができます。日常は現金主義で処理し、決算では発生主義に戻している会社さんも多いかもしれないですね。少なくとも会社では、あくまで発生主義による決算が求められています。
それでは、具体例で処理を確認してみましょう。家賃を前払いしているとき、後払いしているときについて見てみましょう。
<具体例①>20X1年12月末に翌半年分(20X2年1~6月分)の家賃60万円を前払いしている場合
日付 |
発生主義 |
現金主義 |
20X1 / 12 /31 |
前払費用 600,000 / 現 金 600,000 ⇒翌年1~6月に発生する費用であるため、費用としては認識せず、資産(前払費用)を計上。 |
支払家賃 600,000 / 現 金 600,000 ⇒支出時に費用(支払家賃)として認識。 |
20X2 / 1 /31 |
支払家賃 100,000 / 前払費用 100,000 ⇒1ヶ月分(60万円÷6ヶ月)を発生した月に費用として認識。 (2~6月末も同様) |
仕訳なし |
<具体例②>20X2年1月月初に前年半年分(20X1年7~12月分)の家賃60万円をまとめて後払いしている場合
日付 |
発生主義 |
現金主義 |
20X1 / 12 /31 |
支払家賃 100,000 / 未払費用 100,000 ⇒1ヶ月分(60万円÷6ヶ月)を発生した月に費用(支払家賃)として認識。また、支払いは行っていないため、負債(未払費用)を計上。 (7~11月末も同様) |
仕訳なし |
20X2 / 1 /31 |
未払費用 600,000 / 現 金 600,000 ⇒前年7~12月に発生し、計上済みの費用 であるため認識なし。 |
支払家賃 600,000 / 現 金 600,000 ⇒支出時に費用として認識。 |
上記のように、発生主義と現金主義では、収益・費用の計上時期が違ってくることが分かります。
次回は、これに関係する節税の方法を紹介します。