第3回 相続税率が変わる
今回の相続税法の改正として、「基礎控除額」とともに大きく変わるのが、「相続税率の引き上げ」です。この改正も、平成27年1月1日以後より適用されます。「基礎控除額が下がるのに、税率は上がるのか…」と思った方、その通りです。ただ、今回の改正ポイントは、2億円を超える相続財産を相続する場合に適用される税率が上がっているという点です。現行と改正前の税率を表にまとめました。
【改正前後の税率】
現 行 |
改正後 (平成27年1月1日以後) |
||||
各相続人の相続税 対象額 |
税率 |
控除額 |
各相続人の相続税 対象額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
3億円以下 |
40% |
1,700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
|||
3億円超の金額 |
50% |
4,700万円 |
6億円以下の金額 |
50% |
4,200万円 |
6億円超の金額 |
55% |
7,200万円 |
表のうち、「各相続人の相続税対象額」は、上記の基礎控除額の控除後に各相続人に配分した後の金額となります。その配分後の金額に、上記税率を乗じた後、控除額を引いた金額が相続税額になります。上記表の控除額は、基礎控除額とは関係なく、税額計算時に使用されるものです。
現行と改正後について、それぞれ簡単に計算してみましょう。ここでは相続人(相続財産を受け継ぐ人)を配偶者一人が相続財産3億円の相続を受けるとして考えてみます。
<現行>
① 各相続人の相続税対象額
・相続財産総額 3億円
・基礎控除額 5,000万円 + 1,000万円×1人 = △ 6,000万円
2億4,000万円
② 相続税額
2億4,000万円 × 40% - 1,700万円 = 7,900万円
<改正後>
① 各相続人の相続税対象額
・相続財産総額 3億円
・基礎控除額 3,000万円 + 600万円×1人 = △ 3,600万円
2億6,400万円
② 相続税額
2億6,400万円 × 45% - 2,700万円 = 9,180万円
現行 |
改正後 |
平成27年1月1日以降の相続では、1,280万円も多く相続税が発生することに!! |
増額分 |
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現行 |
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同じ3億円の財産を相続するのに、今と平成27年1月1日以降では、1,280万円も多くなっています。私も計算してみて驚いています。
細かく見れば、税率が上がることとなるのは、2億円を超えるものから3億円以下、そして6億円を越えるものの財産を相続する方、ということになります。しかし、仮に税率に変更がない財産金額を相続する方でも、基礎控除額が下がっている点で相続税の金額は増えてしまいます。「自分には関係ない」…とは、なかなか言い難いのではないでしょうか。
基礎控除の減少により、相続税の対象となる方が増えるだけでなく、相続財産が多い方の納税額が上がることになり、厳しい改正になると言えます。
担当 : 久留島 光博